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供養の意味と檀家について

仏教供養という言葉を耳にする機会は多いですし、なんとなく言葉の意味を理解している方は多いですが、由来や正確な意味までご存知の方は少ないかと思います。故人のためにも供養への理解を深めておくと良いでしょう。また、従来はお寺との付き合いのある家庭が多く、お墓は先祖代々が受け継いできたものに入るというのが一般的でした。檀家や檀那寺という言葉を聞いたことがあっても、意味や関係性について深く理解している方は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、供養の意味と檀家についてを詳しくお伝え致します。


供養の意味や由来について

供養

供養はインドの初期仏教から脈々と続いている発想です。元来仏教の言葉であるため他の宗教葬などでは用いない言葉ですが、現在の捉え方を鑑みて他の宗教でも同様の考えに行きつく場合もあります。

供養の由来は元々サンスクリット語での「プージャー」の意訳と言われています。プージャーは尊敬という意味があり神仏に食事や花を捧げて謝意や敬意を伝える儀式のことも指していました。訳語である供養は「供給資養」という言葉を略したものです。供給は文字通り物をそなえることを示し、資養は資質(心)を養うこととされています。供養には物品だけでなく心が大切という意味が込められており、語源となった言葉の尊敬と言う意味も相まって清い心をもって敬意を表すことが始まりだといえるでしょう。プージャーは主に神仏が対象でしたが、仏教が日本に伝来した際に日本古来の祖先崇拝の習俗の影響を受け、現代における供養は「亡くなった故人や先祖の霊を供物でもてなす、弔う」という意味で浸透しています。

供養には仏や菩薩などの仏教の供養と死者や祖先に対する供養である追善供養があります。さらに仏や人間だけでなく動物も死者と捉えられ幅広く供養されています。生き物のみならず、人の生活に密接した物や道具に対して供養が行われることもあり、針・鏡供養・人形などの供養がその代表であると言えます。仏教徒の供養は四十九日や一周忌などの節目に行われることが多く、お寺の本堂や自宅で僧侶に読経供養を依頼し供養の後には食事を行う場合もあります。また、手元供養という方法も供養のひとつです。供養の方法は多様化していますので、お墓だけでなく納骨堂や樹木葬・散骨など個々の宗教観や死生観に応じて選ぶことができます。

供養の種類について

仏の供養には以下の三種類があり、その内の一つでも欠けてしまうと功徳がないとされています。

利供養
利供養は亡くなった方にお供えをすることであり、香りや花・食べ物を仏前にお供えすることで供養します。お供えをするのは墓前・仏壇を問いません。場所や方法に縛られることなく故人を偲べるのが利供養です。故人の嗜好品や好んだものを供えることで、心の距離を縮められるとも言われており、真心を込めて供えることで大きな功徳が沸き上がると言われているのです。ただし、功徳は利益を追求した積み方をしても意味がありませんから、心から相手を思いやり行うことに意味があります。
敬供養
敬供養は仏教を敬う行為であり、字のごとく神仏の徳を讃え信仰して敬うことを言います。お経を読む・唱えることは勿論、お経を学ぶことも敬供養であると考えられています。そのため法事の場で僧侶が読経するのも敬供養のひとつであり、読経してもらうことで生ずる功徳を得られると考えられています。故人が成仏できるよう、お経を理解し唱えることは真心であるとも考えられ大きな功徳になるのです。
行供養
行供養は仏前修行を指し、仏教の教えに従って世のため人のために善い行いをし、善行によって善い報いを故人に廻らせることを目的として行います。行供養を行うことは利供養や敬供養を超える大きな功徳となります。身をもって故人を供養することで、仏の教えも理解できると考えられ仏道も深まると言われています。先祖を敬い親孝行などの世のためになる行いをすることで、毎日の生活の中に仏教の教えを実行できるようになるのです。

故人の霊と共に得を感謝しつつ暮らすことは仏教では非常に美しいことと考えられています。供養の語源には「彩る」という意味もあり、花などの美しいものを備えることも供養のひとつとされています。本堂内にあるきらびやかな飾り物は供養品のひとつであり故人の魂を供養するために備えられているのです。それでは、実際にどのような行為がどの供養に当たるのか具体的に見ていきましょう。

故人を偲び手を合わせる
仏壇に向かって手を合わせ、御膳を供えたり線香を立てたりすることは利供養の一種です。お供え物の内容は宗派にもよりますが、代表的なものは「五供」と呼ばれている五種類のものです。
法要(法事)を執り行う
法要(法事)は亡くなった方に祈りを供える仏教行事であり、正確にはお坊さんに経を上げてもらう儀式を法要と言い、その後の会食を含めると法事と呼びます。法要・法事は敬供養の一種です。法要は死後の裁きが良いものであるよう生ける者が善行をお裾分けするという追善供養の考え方に基づいています。内容や実施する年は宗派や地域、考え方によって異なります。
仏道修行をする
行供養には仏道修行をすることをいいますが、仏道修行という言葉を聞くと特別な行いを連想してしまいそうですが、仏道修行とは要するに善行のことです。善い報いを亡き人に廻らし、仏道修行に適う生き方をして自らもまた生きながらに仏となることを目指して日常生活を生きていくことが大切です。

上記で挙げた以外にも、遺骨が納められている墓前で祈りを捧げるお墓参りも供養の一種です。墓石や周辺を掃除したり仏花や線香を供えたりすることで、亡くなった方を供養します。お伝えしてきた通り、供養というのは僧侶にお経をあげてもらうことだけではありません。先祖や故人を偲び、感謝することが供養の本来の目的であると言えるでしょう。


檀家について

お布施

檀家(だんか)とは、特定の寺院に所属しお布施や寄付などで寺院を経済的に支援する家のことを指します。その見返りとして寺院は檀家の葬儀や法要・お墓の管理などを手厚く行います。檀家という呼び名は古代インドで使われていたサンスクリット語の寺や僧を援助する者という意味の「ダーナパティ」という言葉が語源となっています。
檀家は個人がなるものではなくあくまで家単位でなるものです。ですから、自分では檀家になった覚えはなくとも家が墓のある寺院の檀家になっているということも珍しくはありません。一方、個人で特定の寺院に所属・支援している場合は「信徒」と呼ばれます。※浄土真宗では檀家という言葉を使わず「門徒」としています。※

檀家であるかどうかに関わらず、葬儀や法要を依頼する寺院を菩提寺と呼びます。その寺院が所属する宗派そのものに所属したわけではないので、同一宗派の他の寺院すべてが菩提寺というわけではありません。同様にその宗派の大本山も菩提寺ではないので注意が必要です。檀家の考え方は、仏教と共に伝えられ飛鳥時代には早くも現代の檀家制度の原型ができ上がったと考えられています。江戸時代には、幕府が信仰を禁止していたキリスト教徒ではないことを証明するために、寺院に所属して檀家になることが義務付けられ、これを寺請制度と呼びます。この寺請制度により檀家制度は日本の社会に定着したと考えられています。
また、近年では「菩提寺」と「壇那寺」は同じような意味合いで使われますが、厳密には異なります。壇那寺は自分が帰依する寺院のことで、自身が檀家となって経済的に支援している寺院のことです。檀那寺には、葬儀・法要やお墓の管理、先祖の供養をしてもらう代わりにお布施を納めます。

ここまで檀家についてお伝えしてきましたが、檀家を持たない寺院もあります。檀家を持たない寺院には墓地もなくお墓がありません。檀家を持たない寺院は祈祷料や拝観料を経済的基盤としており「祈祷寺」と呼ばれることもあります。菩提寺は先祖の供養をする寺院ですが、祈祷寺は今後の繁栄を祈るための寺院ということです。

檀家の義務や利点と欠点について

先にお伝えした様に、過去には江戸幕府が定めた国の制度として寺請制度という縛りがありました。檀家になることを強制され、葬儀や法要を行いお布施を納めることが義務化されていたのです。寺請制度が廃止された今も檀家という慣習は残っていますが、現在において檀家と壇那寺の間に法的な縛りはありません。お布施を納めることは義務ではなく、檀家と壇那寺の間には持ちつ持たれつの関係性が築かれています。しかし、入檀する際には「檀家契約書・墓地申込書」といったような契約書を取り交わすことになります。檀家契約書には、会費や離檀料などの金銭的な規約や檀家心得、改葬に関する取り決めなど重要事項が記載されています。お布施や寄付は義務ではないため強制はされませんし、お布施の本来の意味はお墓を守ってもらっていることや先祖を供養してもらっていることへの感謝の気持ちを表す為のものです。檀家の経済的支援によって寺院が支えられているのは事実ですし、寺院の修繕や改修の際には寄付を求められる場合もありますから、経済的負担を感じてしまう場合もあるかもしれません。納めるのが難しい場合は寺院に相談するか離檀するといった方法を検討しましょう。※入檀契約書などがすべての寺院にあるというわけではありません。※

それでは、檀家になることによる利点や欠点をみていきましょう。まずは檀家になる利点ですが、檀家になると葬儀・法事から墓の建立まで仏事のすべてをその寺院にお任せすることができ手厚い供養を行うことができます。突然の不幸が起きた場合でも慌てて寺院を探す必要がなく安心してお任せできるというのは檀家にとって大きな利点といえます。お彼岸やお盆といった寺院にとっての繁忙期にあたる時期であっても、法事や法要の依頼など優先的に対応してもらえることが多く、仏事に関して不明なことも気軽に相談できるのは檀家ならではの特権と言えるでしょう。また、寺院の行事や寺院が主催する地域の催しなどに参加することで地縁ができ地域に貢献することにもつながります。
檀家になる欠点として挙げられるのはまず金銭的負担でしょう。檀家は菩提寺に葬祭や仏事をお任せして、その謝礼としてお布施などの金銭的な援助を行います。この為、一定の金銭的負担がかかります。新しく檀家になる際にも寺院によっては入檀料が必要な場合もあり、寺院の修理や建て替えなどの際には寄付を求められることもあります。金銭面以外の欠点としては、檀家として行事や法要への参加さらに準備や運営の手伝いを求められる場合がある点でしょう。忙しい人の場合は時間的拘束が負担に感じるかもしれません。また、葬儀・仏事を取り仕切ってもらえるという安心感がある一方で希望通りの葬儀や法要が行えないといった制約が欠点となるケースもあります。

ここからは檀家になる為に必要な手続きについてお伝え致します。特定の寺院の檀家になることは「入檀」と呼ばれ、通常はその寺院に墓地を持つことになります。入檀するための手続きは寺院によって様々です。檀家契約書・墓地契約書のような書類をを取り交わし、入檀料を支払いを求める寺院もありますし、口約束で檀家関係を結ぶような寺院や入檀料を不要とする寺院もあります。この様に宗派や寺院によって異なりますので一概には言えませんが、入檀料の相場は約10~30万円程度とされています。入檀料には墓地の使用料が含まれている場合と別途使用料が必要な場合があるので事前に確認しておきましょう。
また、入檀料の他に志納金や護持会費などと呼ばれる会費を支払う場合もあります。これは、墓地の清掃や管理をはじめとする寺院の運営のために檀家が負担する費用で年間約5千円~2万円程度が相場とされています。志納金とは別に寺院の設備の修繕時などに寄付を求められる場合もあります。位牌を安置するための位牌堂の使用料も必要となるケースがあり、相場は約10万円程度です。後々のトラブルを防ぐためにも入檀の際には不明なことや気がかりな点があれば遠慮することなく寺院に確認しましょう。

離檀について

檀家をやめることは「離檀」と言います。近年は墓地の後継者がいない、後継者が故郷を離れてしまったなどの理由で離檀を選ぶ方も以前に比べ増えてきています。離檀するためには、菩提寺に離檀料を支払う必要があります。離檀料の相場は約10~20万円程度といわれていますが、檀家と菩提寺の関係によって決まりますので一概にはいえないのが実状です。中には離檀料を不要とする寺院もありますから、寺院の考えや方針によって対応が大きく変わるでしょう。また、菩提寺に墓地がある場合には他の場所に移さなければならずさまざまな費用が必要となります。

墓地を移す場合の費用
閉眼供養・開眼供養の費用
お墓を移動す場合は魂を抜く「閉眼法要」と、移動後に魂を入れる「開眼法要」を行う必要があります。費用の相場は約3万円~10万円程度です。
墓石の撤去・区画の整地化費用
撤去と区画の整地化に伴う費用の相場は1平米あたり約15万円~20万円程度で一区画の墓地では約60万円程度です。
遺骨の取り出し費用
無料の場合もありますし、業者によっては遺骨一体につき約4万円程度を求める場合もあるように石材店によって様々です。
墓石運搬料
移転先の墓地でも現在の墓石を継続して使用する場合は運搬料が必要となり、墓石の大きさや移動距離によって異なりますが相場は約20~80万円程度です。
墓石建立費
移転先の墓地が他からの移転を認めていないもしくは移転先の区画に現在の墓石のサイズが合わないといった場合は新しく墓石を建てる必要があります。費用の相場は約200~300万円程度です。
埋骨費用
移転先の墓地を管轄する寺院などに支払います。相場は遺骨一体につき約3万円程度です。

離檀を希望する場合には入檀の際に取り交わした契約書を確認する必要があります。離檀の際は口頭で伝えれば良いのか、所定の書類を提出しなければならないのかといった手続きなどについて書かれているはずです。書類を確認しても離檀の手続きが不明な場合は寺院に直接確認することになります。離檀を視野に入れた場合、寺院への相談は可能な限り早い段階で行うようにしましょう。通常は新しい墓地を検討し始めた時点で相談を行い、寺院の理解を得ながら離檀手続きを進めます。新しい墓地を決めてから突然離檀を切り出すといった礼儀を欠いた姿勢では寺院の理解を得ることが難しくなりますので注意が必要です。

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